未来は霧のなか
始業式の後、私達はまた いつもの店で 寄り道をした。
珍しく、美佐子も一緒に来る。
「それでは、今日の成果を 報告します。」
と美佐子は明るく言う。
「キャー。」
と笑う仲間達。
「朝校門で、信太郎に 地元の友達のことで相談がある、って言ったの。そうしたら信太郎、悪い仲間か、なんて聞いてさ。帰りに 生活指導室で待っているから、って言うの。」
美佐子は朝のことを、得意気に話す。
「えー。美佐子、すっぽかしたの?」
あゆみは、驚いた声を出す。
美佐子は、ハンバーガーを頬張りながら
「今日、行かないと、信太郎、心配するでしょう。」
と得意気な笑顔で言う。
「さすが、恋愛マスター。」
と茶化す千恵。
「で、浩子は?」
輝美に聞かれて、
「私も、始業式が始まる前 体育館の入口で、藤田に会ったよ。」
私が 照れながら言うと、みんなも身を乗り出す。
「それで?」
と聞く美佐子。
「うん。私、おはようございます って言ったのね。そしたら藤田、おう って言って私を見て、髪伸びたなって言ったの。」
藤田が、私の変化に 気付いたことが 私は嬉しかった。
「それだけ?」
呆れた顔をする美佐子。
私は、ガクッと首を落とす。
その姿を見て、仲間達は ケラケラ笑う。
「藤田が、私を見ただけでいいの。」
少し膨れて言い返す私。
「駄目だなあ。もっと、グイグイ行かないと。」
美佐子は、しみじみと言って 私を見る。
「私、このくらいでいいの。何か、片思いっぽくて楽しいし。」
私は、本当に 藤田を好きになり始めていた。