未来は霧のなか
「多分、この道だと思うんだけど。」
商店街から少し外れた 細い路地を曲る美佐子。
「ねえ、あそこじゃない。」
昔ながらの 地味な喫茶店を見て 私が言う。
「野ばら。ここだ。」
道路に置かれた 古い看板を見て、美佐子も言う。
店の前で、一瞬 私達は目を合わせる。
美佐子は 小さく頷いて ドアを開いた。
思ったとおり、狭い店内。
ドアのすぐ脇に 階段がある。
「いらっしゃいませ。2階へどうぞ。」
奥に座っていた 女の人が言う。
美佐子と私は 目配せをして 階段を登った。