未来は霧のなか
風を冷たく感じはじめる季節。
西日の当たる『野ばら』の2階は、夕方でも暖かい。
美佐子は 夢中で 幸也のことを話す。
「幸也に憧れている子、多いけど。みんな真理《まり》のことも 好きだから。」
美佐子の地元で、チームのサブリーダーをしている幸也。
私達と同じ年。
高校には 行っていないらしい。
「入学して3日目に、先生をぶん殴って。学校止めたんだ。」
と美佐子は言った。
私は、チームも リーダーも知らない。
高校にも行かず 何をしているのか。
美佐子は 夜 合流して 遊んでいるらしい。
「幸也が 踊っている姿、本当に カッコいいから。見たら、浩子も惚れるって。」
美佐子は言う。
「えー。私のタイプじゃないよ。」
前に 美佐子から、携帯電話の写真を 見せてもらったけれど。
黒い顔、チリチリの茶髪。
怖そうな印象しか 感じなかった。
「まあ、私と浩子は、男の好みが違うからね。」
美佐子は 楽しそうに笑う。