未来は霧のなか

「お前さあ、彼氏いなかったの?」

突然、亮太は話題を変える。
 

「いないよ。いたら、中村君と 付き合わないよ。」

私も真剣に答える。
 


「そうだよな。今までに、何人くらいと付き合った?」

亮太は さらに聞いてくる。
 

「えー。ゼロって言ったら笑う?」

一瞬 言うべきか迷って 私は正直に言う。
 

「マジで?」

亮太は驚いた声で言った。


その声が 少し嬉しそうで 私はホッとした。
 

「悪い?女子校だから。彼氏なんて なかなかできないよ。」

私は、少し膨れて言い
 


「中村君は?」

と聞いてみる。
 

「お前、いつまでも 中村君って呼ぶなよ。」

と亮太は、話題を逸らした。
 
「自分だって、いつまでも お前とか 言うくせに。」

私が言い返すと
 
「じゃ、お互いに、名前で呼ぼうよ。」

と亮太は、少し照れた声で言う。
 


「えー。何か、恥ずかしいね。亮太って呼ぶの?」

私が聞くと、
 

「うん。俺は、お前って言うけどね。」


と亮太は 嬉しそうに笑った。
 


こんな風に 男の子と話すことは 初めての私。

しかも、好意を持っていた亮太と。


私は、初めての恋に浮かれた。


亮太と話している時は 美佐子のことも 忘れられた。
 
 


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