未来は霧のなか

「美佐子って、大人っぽいよね。」

先生が 来るまでの時間、私は 美佐子と話し続けた。
 
「そう言われるけど。留年している訳じゃないからね。」

と美佐子は、笑う。
 
「そんなこと、思ってないよ。いいなあ。私、童顔だから。羨ましいよ。」

私が言うと
 
「髪型、変えれば。少し、伸ばしなよ。」

美佐子は、私を ジロジロ見て言う。
 

「そう?そうしたら、大人っぽくなる?」

私は、ショートヘアを触りながら 言う。
 
「少しは なるでしょう。」

美佐子は、クスクス笑う。
 
「ちょっと。笑わないで。」

と言いながら、私は 美佐子の笑顔が 嬉しかった。
 


「浩子も、髪の毛 茶色いよね。」

美佐子は 自分の髪を梳きながら 言う。
 
「うん。自毛だよ。」

私が答えると
 
「私も自毛だよ。みんな、信じないけど。」

と美佐子は、フッと息を吐く。
 


「自毛か 染めているかくらい、見れば わかるじゃない。」

私の言葉に
 
「それが、誰も 信じないんだよ。浩子もそのうち、解るよ。髪、伸ばせば。」

と美佐子は答えた。


美佐子と話すことは、とても楽しかった。

他の生徒が、私達二人を チラチラ 見ていることも。
 
 



< 6 / 136 >

この作品をシェア

pagetop