未来は霧のなか
美佐子から連絡があった翌日の放課後 私は亮太に
「美佐子、退学にならなくてすんだよ。一ヶ月の停学だって。」
と話した。
「へえ。」
と言った亮太の目に 落胆の色が浮かんだことに 私は気付いた。
「リョウ、今 がっかりしたでしょう。本当は、美佐子が 退学になればいいって 思っていたでしょう。」
私は、責める目で 亮太を見て言った。
「そんな風には 思わないけど。ヒロが 影響されなければいいとは、思っているよ。」
亮太は 真っ直ぐ 私の目を見た。
私の心にあった反発が 萎えるほど、熱い瞳で。
「影響なんかされないし。第一 私 放課後だって リョウと一緒にいるから。もう 美佐子とは 遊ばないし。」
私の口調は、少しずつ弱くなる。
亮太を思う気持ちが 強くなっていることを 私は認めてしまう。
「別に、ヒロを 疑っている訳じゃないよ。」
と言って、亮太は次の言葉を飲み込んだ。
「なあに。何か言いたいんでしょう。」
私が強く聞くと、
「ヒロを 傷付けたくないじゃん。好きだから。」
と亮太は言った。
熱い思いが、私の胸に溢れて少し俯く。
「ありがとう。嬉しい。」黙って 私の言葉を待つ亮太に 私は顔を上げて言う。
亮太は 照れた笑顔で、私を見て小さく頷く。