未来は霧のなか
亮太のお父さんは 税理士で、地元では ちょっとした名士だった。
大きな家の一角を 事務所にして お母さんも 仕事を手伝っているらしい。
中学生の頃 見かけた 亮太のお母さんは テキパキした感じの きれいな人だった。
お兄さんと 二人兄弟の亮太。
お兄さんは 亮太が落ちた高校の 3年生。
この秋 推薦で、お父さんが卒業した大学に 合格したらしい。
だから亮太も その高校に 入りたかったのだろう。
そして お兄さんのように お父さんと 同じ道に 進みたいと思っている。
中学生の頃、亮太は お父さんの職業のせいで 特別扱いされることが多かった。
アカデミックで 高収入な亮太の家庭は 地元では 上流階級だから。
亮太自身は 他の子と変わらないけれど。
明るいお調子者で。
いたずらばかりしていたけれど。
明るい笑顔の 裏側には、亮太にしか わからない思いも あったのだろう。
以前亮太は、兄貴には 負けたくないと言った。
優秀なお兄さんへの、コンプレックス。
だから無理を承知で、受験したのかもしれない。
亮太だって、自分と戦っている。
家族の期待や プレッシャー。
そんな素振りは見せないけれど。
いつも明るくて。
眩しいほどに。
そう思った時 私の思いは 今までよりも 熱く強くなった。