未来は霧のなか
「はじめまして。2中で 同じクラスだった 山口です。」
玄関先で、亮太のお母さんに 挨拶をすると、
「どうぞ、上がって。」
とお母さんは 明るい笑顔を 私に向けた。
「亮太、お母さん仕事があるから。何かあったら 事務所にいるからね。」
と亮太に言う。
「何も ねえし。」
と亮太は、ぶっきらぼうに答える。
お母さんは、クスクス笑って
「亮太って、面食いだったのね。」
と言った後で、私の方を見て
「ゆっくりしていってね。」と言った。
亮太に促されて 階段を上がり、亮太の部屋に入る。
大きな家だから。
私の部屋よりも広い亮太の部屋。
ベッド、机、飾り棚。
部屋の真ん中に、こたつがあった。
「適当に座っていて。俺、飲み物持ってくるから。」
そう言って亮太は、部屋を出て行った。
私はこたつに入って、キョロキョロと 部屋を見回す。
1時10分を過ぎた時計。
駅から10分か、と思った私は やっぱり 緊張していた。