未来は霧のなか

私は、世間並の お小遣いしか もらっていなかった。

仲間と 毎日 寄り道をしていた頃は 月末になると お小遣いが足りなくなっていた。

参考書を買うとか、模擬テストがあるとか。


母を誤魔化して 追加のお小遣いを もらっていた。
 


亮太は 二人分の支払いをしても お小遣いに 不自由していない。
 
「リョウ、お小遣い、大丈夫?」

毎日 2人で 寄り道をしていた頃、聞いたことがある。
 
「大丈夫だよ。俺んち、セレブだって知らないの?」

と亮太は冗談っぽく言った。


地元で セレブ扱いされていた亮太の、精一杯の皮肉。

自分に対しての。
 

「そうかもしれないけど。」

と私が口ごもると亮太は、
 
「俺も 親父の後を継いで ヒロに贅沢させてあげるね。」

と言って、少し照れた笑顔で 私を見つめた。


私は、胸がいっぱいで、頬を染めて頷く。
 

もしかして 亮太は 私との結婚を考えている。



まだ16才なのに。



私を 大切に思っている。



それは鮮やかな衝撃だった。
 


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