未来は霧のなか

「先生、変わっていますね。普通、私のことを 考えてくれる人は、美佐子に 深入りするなって言いますよ。美佐子の影響で、私まで 悪く見られることもあるから。」

私の心には、亮太が浮かんでいた。

亮太と 逆のことを言う藤田。

私のことは どうでもいいのか。



「山口は、金井の親友じゃないのか。」

藤田は、私の剣幕に 驚いていた。
 
「親友ですよ。仲良いし。でも、先生が 私に頼むのって おかしくないですか。美佐子の親でもないのに。」

私の抑えた声は 怒りで震えていた。

藤田は、何もわかっていない。

私の気持ちなんて考えていない。


爆発した私の心は 粉々に砕けて 毒に変わっていく。
 

「おかしくないだろう。金井も山口も 俺の生徒なんだから。」

藤田は、私の怒りに 戸惑っていた。

私を 怒らせるような事は 言っていないから。
 


「へえ。生徒だから。じゃ私のことは 心配じゃないんですか。私、入学した頃よりも 派手になったって みんなに言われます。美佐子の影響だって。先生は、そう思わないんですか。」

私は 藤田を真っ直ぐに見て 続ける。
 
「生活指導の先生なら、言うこと 違うんじゃないですか。美佐子と離れなさい。元々のお前は、真面目なんだから。ちゃんと勉強して 大学を目指しなさい って言うでしょう。」


私はそう言って、じっと 藤田を見つめた。
 

「どうしたんだ、山口。何を怒っている。」

藤田は 心配そうに私を見た。
 
「もういいです。先生なんか、大っ嫌い。」

私は 吐き捨てるように言うと、藤田に 背を向けて 駆け出した。
 
 


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