未来は霧のなか

こんな時に限って、藤田は 校門の前で 登校指導をしていた。
 

私は『はぁ。』と小さくため息をつく。

下を向いて、他の生徒に紛れて 通り過ぎようとした時、
 

「おはよう、山口。」

と藤田は 私を呼び止めた。
 
「おはようございます。」

と答えて、私は 立ち止る。
 


「先生。この間は、すみませんでした。」

覚悟を決めて 顔を上げ、藤田に謝る。
 
「後で、教官室に来なさい。ゆっくり 話しを聞くから。」

藤田は、少し微笑んで言った。
 


小走りに 藤田の横を通り過ぎ。

また小さくため息をつく。


今日は体育があるから。

どうせ後で、顔を合わせるし。


今、会っておいてよかったと思いながら。

でも私は、教官室には行かないだろう。
 
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