ぜんぜん足りない。
「っ、え? やっ、なんでっ、 」
戸惑いのあまり、つい胸板を押し返してしまう。
「“なんで”? これは桃音がいつもおれにやってることでしょ」
「っそ、うだけど、自分からするのと、してもらうのじゃ、ぜんぜん違……」
「へえ、そっか」
うしろに回ったこおり君の指先が、つーっと背中をなぞった。
「ひゃう、」
触れられたところを中心に、ぞくぞくっとした感覚が全身を駆け抜ける。
意識がこおり君に全集中してしまってるせい。
「……髪濡れてる」
「お風呂、あがったばっかりなので」
「ふうん。それより、なんで昨日来なかったの」
「え。あ、昨日は……」
こおり君に、気にしてほしかったんだよ。
……って言ったら、どんな反応するの、かな。
「なんとか言いなよ」
「う……」
「おれに言えないようなことしてたんだ」
「ちがうよ、ほんとはね、……ひゃ、あ」
答えようとしたら、こおり君の手が脇腹まで移動してきて、強くも弱くもない力でそこを刺激する。