ぜんぜん足りない。
それより、ひっきりなしにスマホが鳴ってたって言ってたよね。
確認すると画面にズラリ不在着信の通知が現れる。ぜんぶ律希から。
仕方なく折り返すことにする。
「もしもし律希、どうしたの……」
『エアコンのリモコンどこ』
「え?」
『探したけどない。どこ』
「ええっと、テレビの下にない?」
『ないから掛けてんだよ』
「………」
なに偉そうに。勝手に出ていって勝手に帰ってきたくせに。
「パソコンの台の上は?」
『ない』
「そんなはずないよ。よく探して」
『もう探すの疲れた』
「じゃあ知らない。切るからね」
『切るなよ。待って俺しぬ。エアコンないとしぬ、桃音』
「………」
こんなとき無慈悲になれないのは、以前好きだった弱みって……やつ、なのかな。
「もう……。ちょっと待ってて、そっち行くから」
気づいたらそう言ってた。
……ほんとに考えなしだったと思う。