ぜんぜん足りない。
お風呂に入ってるこおり君に外から声をかけて、ルームキーを借りた。
じゃないとオートロック式のこの部屋から締め出されることになっちゃうから。
そこまでは頭が回るのに、わたしは……本当にマヌケで愚かだった。
──やっぱり、お風呂でのぼせてたのかもしれない。
ピンポーン。
自分の部屋のインターホンを押すのも不思議な感じがするなあ、なんて呑気に考えてた矢先。
「は?」
開いた扉の隙間から、目をまん丸にした律希が顔を見せた。
約2年ぶりの再会とはいえ、そんなに驚くことある?
そんな疑問を抱いた直後、わたしはその理由を知る。
「お前、どっから来た?」
「へ?」
「通話切ってからここ着くの早すぎだろどう考えても。てか、パジャマ……」
「………」
頭に浮かんだのは4文字。
──────し ま っ た 。
一拍遅れて心臓が狂ったように暴れだす。