ぜんぜん足りない。
自分の口からふぅ…っと気の抜けた吐息がこぼれる。
でた。こおり君の悪趣味。
「もうっ、脇腹、そう、するの……やめてって、何回も言ってるのに……っ」
冷たい体温が触れるたびに、条件反射みたいに肌が揺れる。
怒りたいのに、絶妙なくすぐったさが表情のコントロールを不能にする。
「ひゃ、っ……うぐっ」
声をこらえようと唇を噛んだら、こもったヘンな声が出てしまった。
言葉で対抗できなから仕方なく、こおり君の服をぎゅっとつかむ。
「も、やめて……おねがい。……はぅ」
「……」
「ねぇ、こおりくん……っ」
懇願すると、ようやく手を止めてくれた。
すっと細められた目がわたしを見下ろす。
「桃音ってほんと、声だけは可愛いよね。顔は、ぜんぜんタイプじゃないけど」