ぜんぜん足りない。

こおり君はわたしを、このまま窒息死させる気なんじゃないかと。

でもこおり君の熱に包まれながら眠りにつけるなら本望かもとかちょっと考えちゃうあたり、
わたしのこおり君への気持ちは、もう戻れないとこまでいっちゃってるんだと思う。


…………酸素足りない、


「いつまで経っても下手くそ」

「……え」

「息できてないじゃん」

「やぅ 、…っ」


下手くそじゃないもん、ちゃんとしてる。つもり。

でもそれでも酸素足りないってくらい、こおり君が……これ以上ないはずの隙間を埋める、みたいに、深く……してくるから



「桃音。口開けて」

「ぅ、え?」

「ほら、おれの言うこときいて」

「……やっ」


わたしの唇を無理やりこじ開けて、熱が入り込んでくる。


「逃げるな」

「んっ……ぁ」


わたしの舌をこおり君が甘く噛んだ。

命令に逆らえない。低い声にぞくぞくして、わたしってエムなのかなとか思っちゃう。

こおり君の言うことをきくのが好きだとか思っちゃう。
救いようがないほど、この人のことが……。
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