ぜんぜん足りない。
「桃音ってさ」
「……うん」
「キスのときヘンな声出すよね」
「っ、ヘ、……変っ⁉」
半分夢心地の高みから、いっきにズドンと落とされたくらいの衝撃だった。
だってヘンって……ヘンって……。
「どっ、どんな風にヘンなのっ?」
「なんか……やらしい」
「……は、えぇ?」
そんなはずないっ、だって。
「わたしキスのとき声出してないよっ」
「出てるよ。甘ったるくて、おれをおかしくさせそうな声」
「そ、それって吐息じゃない? ていうか、わたしがヘンな声すぎておかしくなるの?」
「うん」
「でも、こおり君が、下手くそ、息ちゃんとできてないって言うじゃん……。ちゃんと息したら、声……我慢できないかも」
「できなくていいよ」