ぜんぜん足りない。
「わあ、酢豚!美味しそう」
やったあ、今日もこおり君に会えるぞ! って思ったら途端に元気がみなぎってきて、料理が並ぶ頃にはハイになっていた。
「わーん美味しいよ〜律希って天才かなあ。腕あがった?」
「寮生活は自炊が基本だから」
「ん〜なるほど。えらいね」
「桃音はちゃんと自炊してんの?」
「あ、う、ん、してる……」
喉でくくっと笑う声がした。
してねぇなその返事は、って意地悪な声で言われる。
あ。この感じ、昔っぽい。
「してるよ! コンビニのカットしてある野菜とか使って、まあまあズボラだけど、ちゃんとつくってるよ」
「へー。偉いじゃん」
「でしょ」
キスのことにはわざと触れなかったんだと思う。
いつも通りいつも通り…をたぶんお互い意識してた。