ぜんぜん足りない。


「暑い」「狭い」「邪魔」、そうやって睨まれてもわたしは退かないし、律希もわざわざ違う場所に移動することはしない。

ふたりでソファーで過ごすのが、この1週間のうちに気づいたら日課になっていた。



「律希、今日のお夕飯は何がいいかなあ」

「んー。たまには手抜きでいいんじゃね」

「……コンビニ?」

「っし、行くか」


合意のもと、コンビニへ出発。


「わたし今日は白米が食べたいなあ。のり弁あったらそれにしよ〜」

「俺はめっちゃ辛いの食いたい」

「あ。たしか激辛担々麺売ってたはずだよ」

「マジ? 買うわ」


普通の会話、気も遣わない。
律希とは“家族”って関係が1番しっくりくる。

でも、やっぱり男の子だ。


隣に立って目を合わせるには見上げなきゃいけない、袖口からのぞく手はゴツゴツしてて大きいし、ほどよくついた筋肉を見る限り、力じゃとても勝てっこない。


さりげなく車道側を歩いてくれてる……この人が、好き“だった”。

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