ぜんぜん足りない。
コンビニに着いてお弁当のコーナーに向かう。
すると、
「あれ? 国立?」
聞き覚えのある声が飛んできた。顔を上げると、中学で同じクラスだった男の子が立っていて。
「おっ。やっぱり国立桃音だ! 」
「池田くん! 久しぶりだね〜」
「おう。そういや、律希元気? って、わかんねぇか。あいつ寮入ってるんだったな」
「あ、実はちょうど今帰ってきててね、一緒にコンビニ来たんだ。たぶん、カップ麺のコーナーにいると思う」
すると池田くんは、マジ?と目を輝かせた。
そういえば律希と仲良かったっけ、と思い出す。
「てか、さあ。律希と付き合ってる?」
「……へっ? いやそんなわけ」
なんの脈絡もなく聞かれるからびっくりした。
「マジ? 両想いだったんじゃねーの?」
「っえ、それはないよ…」
「けどあいつ、家を出たのは “これ以上桃音の近くにいると手出しそうだったから” って言ってたけどな?」
「……、え?」
そんじゃーな、って。呑気に手を振った池田くんは、思考が停止したわたしを置き去りにした。
のり弁は目の前にあるのに、それどころじゃない。
律希が家を出た理由。
中3の終わりから急に冷たくなって、嫌われたんだって……わたしといたくないから出ていったんだって、思ってた。
……違ったの?
いや、まさか。嘘だよね?
律希がわたしのこと好……、きとか。
……そんなの知らない!