ぜんぜん足りない。
「こおり君、元気にしてた?」
「もうちょっと気の利いた会話しなよ」
「だって、1週間も話せなかったんだよ」
「毎日うざいくらいにスマホに通知入ってたけど?」
たしかに毎日メッセージは送ってたけど、それって肉声で話してるわけじゃないし、そもそもこおり君は返事をくれないし。
「メッセージ、しつこかった?」
「うん」
「じゃあ、量減らすようにするね……」
ああ、やっぱり相変わらずだな。
でも、そのせいで耐性がついて鍛えられたと思う。度胸もついた気がする。
「でも、既読無視は悲しいから、せめてスタンプ返してくれたらうれしい……なあ、なんて」
ダメ元でも、ワガママを言えるようになった。
「わかったわかった。スタンプね」
「え、いいの?」
不定期に甘やかしてくれるから、調子に乗る。
「じゃ、じゃあ……キスしたい、今……」
「はあ?」
「エ、エレベーターの中だから、今は誰も見てないよ! ぜったいバレない!」