ぜんぜん足りない。
「………」
「………」
「こおり君」
「なに」
「……スしたい」
「……うん?」
こおり君の「無」によって語彙を封じられたわたしは、ど直球にそう伝えるしかなかった。
「キスしたいよ、こおり君」
シン……と静まる空間。
頭の中で自分の声が反響する。
時間差で、心臓がドクドクッと大きく脈打った。
こおり君、相変わらず「無」。
ここで笑って誤魔化すのは、なんだかみじめすぎる。
キスしたい。キスしたいの、こおり君と。
いつもは踏みとどまってるけど、我慢はつかれるから、たまにはアクセルを踏んでもいいよね?
「恥ずかしいこと言ったんだから、無視しないで」