ぜんぜん足りない。

だから! こおり君がわたしなんかといたら、嫉妬の嵐になっちゃうんだよ!


そう言いかけて、でも結局、声にはならなかった。だって。


「光里っ、おはよう」

こおり君とわたしの間を引き裂くようにして、那月ちゃんが乱入してきたから。



「光里が桃音ちゃんといるって珍しいね?」


こおり君はそれに対して返事をしなかった。那月ちゃんのこともわたしのことも見ないで黙々と歩き続ける。


那月ちゃんが機嫌を伺うようにして、こおり君の制服の裾を引っぱった。



「光里、今日の放課後も空いてる?」


ドキッとした。

今日の放課後 “も”……。


「光里が最近付き合いがよくなったって、みんな喜んでたよ〜」


那月ちゃんは嬉しそうに続ける。

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