ぜんぜん足りない。


あーあ。言っちゃった言っちゃった。


頭からピーって音が出るんじゃないかってくらい熱が溜まっていく。


血液、沸騰してるんじゃないの。




「キスなんて、いつもしてるじゃん」



こおり君がそっとかがんでくるから、心臓がドキン!と跳ねあがった。



「昨日してないもん。今日のぶんもまだだし」

「欲張り」


だってしょうがないじゃん。

欲しいんだもん。


学校じゃ他人扱いでしょ。

家にいるときも、わたしが一方的に甘えてるだけでしょ。



こおり君が足りないの。


かがんだこおり君が、同じ目線にいる。




「さっきの恥ずかしいこと、もっかい言って」

「えっ」

「聞こえなかったから」




嘘つき。



こおり君の悪趣味、その2。

聞こえないふりをすること。同じことを言わせること。



でも、知ってるんだ。聞き返してくるときのこおり君は……




「こおり君とキスしたい」



ぜったい、



「……んっ」



わがまま聞いてくれるって。



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