ぜんぜん足りない。


ぼうっとなる。
これはお風呂でのぼせたときの感覚に似てる。

でも知ってるよ。こんなぜいたくすぎる夢の世界は長くは続かないって。



「桃音ちゃん。本気で好きじゃない男子にベタベタするの、どうかと思うよ?」


那月ちゃんが、さっきまで視界にすら入れてなかったわたしの名前を呼んだ。


「わた……わたし、」

「桃音ちゃんと同じ中学だったっていう子に聞いたよ? ずっと昔から好きな人いるんだよね。遠距離で会えないからって、光里をその人の代わりにするのは違くない?」


唖然とした。

どうしてその話が……。
いや、今はそれよりも、


「わたしはこおり君のこと、本気で好きで……」

「へえ。昨日の夜は違う男子と歩いてたのに?」

「えっ…なんで……。あれはただ一緒にいただけっていうか……あの、」


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