ぜんぜん足りない。
一口すくって差し出せば、律希は素直に甘えて口元を寄せた。
小さい子みたいで可愛い……。
可愛いとか言ったら120%睨まれるだろうから言わないけど。
母性とやらがわたしにもあるみたいで、黙ってもぐもぐしてる律規を見てると、好きなものをなんでも食べさせてあげたくなる。
「……うまかった」
やがて食べ終えた律希は、律儀に手を合わせてごちそうさままでしてくれた。
「じゃあ熱冷まし飲んで、しばらく休んでようね。さっきも言ったけど、わたしのベッド使っていいよ?」
「ソファでいい」
「えっ。でも体痛くならない?」
「でかいから平気。あとは、桃音が近くにいてくれればいい。……俺が寝るまで、リビングから出るなよ」
律希のまぶたが落ちていく。
風邪のときは、誰だって心細くなるもの。
「わかった。わたしここにいるからね」
ソファの下に体育座りをして、律希の寝顔を見つめる。
頭を撫でたのは、たぶん無意識だった。
そして……
律希の吐息を聞きながら、いつの間にかわたしも夢の世界へ誘われるままに落ちていった──────。