ぜんぜん足りない。
律希、ごめんね。ほんとは隣に住んでる人のこと知ってるんだよ。
わたしの好きな人なの……。
「おい桃音!」
腕を掴まれる。
「ちょっと様子見てくるだけだから、」
「いやおかしいだろ!お前関係ねぇんだし」
「か、関係ある……」
「はあ?」
「お隣さんだし……」
「意味わかんねぇよ」
熱があるくせに、やっぱり男の子だ。
掴まれただけで、体はびくとも動かなくなる。
「ほ、ほんとは……わたしのクラスメイトが住んでるんだ……。さっきは嘘ついてごめん」
一時の沈黙。
「マジ?」
「……うん」
「なんで最初に言わなかったんだよ」
「……、」
「まあいいや、あとで聞く。部屋に行くなら俺もついてく」
静かにそう言った律希にごめん、ともう一度謝った。