ぜんぜん足りない。
さっきまであんなに聞こえてのに、わたしたちがリビングから出た瞬間、怒声も激しい物音もピタリと止んでしまった。
……おさまった?
それでも、何が起こってたのか知らずにはいられない。
今、顔を合わせるのが気まずかったとしても……。
ふたりで玄関を出る。
誰もいない、しんと静まり返った廊下。
見た感じ、外は特に変わった様子はないけど……。
「クラスメイトって男?」
「……うん」
「……ふーん」
なにか言いたげに見つめてきたけど、律希はそれ以上なにも言わなかった。
「あのね、律希はちょっと手前の方で待っててくれないかな……。できればその柱の後ろとかで……。えっと、学校で男と住んでるとか噂流されたりしたら、いやだし……」
「……わかったよ」