ぜんぜん足りない。
お願いだからもうやめていただきたい。
これ以上傷をえぐらないでほしいよ、記憶から抹殺してくれないかな。
噂されればされるほど、みじめ……。
でも、いい機会…なのかもしれない。
この原因をつくったのがこおり君だと考えれば、きっぱり嫌いになれるかも……。
こおり君なんか嫌い、嫌い、嫌い、嫌い。
自分の席でうずくまるように頭を抱えてそう唱えていると
「桃音ちゃんおはよ!」
頭上から突然、みっちーの声が。
すばやく隣に腰掛けると、わたしに顔を寄せて、トーンダウンで話しかけてくる。
「昨日大丈夫だった?」
「あ、う……ん。ぜんぜん平気だよ?」
「あいつらよくハメ外すから、こーいう目に遭ってるのは桃音ちゃんだけじゃないんだけど。オレ、光里だけは馬鹿なマネしないって思ってたからショックでさ……」