ぜんぜん足りない。
貶されてもへっちゃら。
誰になんと言われようが、この通知画面は家宝なのである。
ちなみに、ハートで隠してる名前の部分は、【光里くん♡】で登録してる。
光里くん。ヒカリくん。
いつか下の名前で呼ばせてくれるって信じてるんだ。
「あっ。噂をすれば」
声をあげたミヤちゃんの視線をたどると、登校したての男子軍団がいて。
こおり君の姿が、やっぱり最初に目に入った。
「桃ちんの1番推しは今日も生気ないねぇ。都には、よさがわかんな~い」
「生気はあるよ! ちょっとだるそうなだけで」
「それあんま違いなくない? 顔面がいいのはわかるけど、都はオラオラでドエスなのが好きだなあ」
「……こおり君も、けっこうドエスなとこあるよ?」
え? と目を丸くしたミヤちゃんに、わたしはハッと口をつぐむ。
いっけない。
だれにも言わない秘密だから、親友のミヤちゃんの中でも、こおり君はわたしの彼氏でも好きな人でもなく、“推し”ということになっている。
「ドエスなとこ、ありそうじゃない?
意外にも……アハハ」
テキトウに誤魔化して、再びこおり君をうっとり見つめる。
こっち、見てくれないかな。