ぜんぜん足りない。
「おいおい、みっちーはオレたちには見せたくないらしいぞ?」
「みっちー独り占めはよくないよくない!」
そんな耳障りな笑いから助けてくれるようなタイミングで、朝礼開始のチャイムが鳴った。
キーン、コオーンって、いつ聞いても間抜けな音を、これほどありがたいと思ったことはない。
ホッと息をついた、そのすぐ後。
「あんま、くだんないことしてんなよ」
こおり君の声がして反射的に顔を上げると、わたしを囲ってきた男子たちの隣にいつの間にか立っていて。
片方の男子の首根っこを後ろから掴んでいた。
目は……合わない。
「わりわり、怒んなよ光里」
相手はそそくさと回れ右をする。
するとこおり君は一歩こちらに近づいて──────でも、やっぱりわたしのことは見ないで、みっちーの耳元に顔を寄せた。