ぜんぜん足りない。


そんなときだった。


「桃音ちゃーん! 職員室行くんでしょ?」


ずいぶんと大きなボリュームでみっちーが話しかけてきたのは。


それはわたしだけじゃなくて、周りのみんなも振り向かせる。

みっちーはそんなのお構いなしに、わたしの手をぐいぐい引っ張ってこおり君の席のほうに突撃していった。



「ほら光里も。話してる暇なんてないぜ〜? 行くのが遅かったら余計に怒られるぞっ」



ナチュラルな流れでこおり君の腕もつかんで、わたしたちを廊下へと誘導したみっちー。



「ハイ、行ってらっしゃーい」


と、にこにこ顔で送り出す笑顔は、まさに遊園地の係員さんのソレ。

パッと手を離すと、満足げに教室へと戻っていく。


廊下に放り出されてふたりきりになったところで、心臓がドッ…と跳ねた。


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