ぜんぜん足りない。
職員室まで何話せばいいんだろう。
話題を探すものの、話しかけても今までのごとく無視されるだろうから何も言えず、
じっと床を見つめた状態で顔をあげるタイミングを失ってしまう。
視界の端に映るこおり君の上履きが、スッと進行方向を向いた。
無言で職員室のほうへ歩き始める。
すらりと高い身長とスタイルの良さにぼんやり感心したのち、はっっと我を取り戻す。
わたしも行かなくちゃ……!
「こおり君、待っ───ん、うあっ⁉」
つま先に、違和感。
次に聞こえたのは、ガシャンという何かが崩れる悲壮な音と、「うぐっ」という、なんとも可愛くない潰れた自分の声だった。