ぜんぜん足りない。


職員室まで何話せばいいんだろう。


話題を探すものの、話しかけても今までのごとく無視されるだろうから何も言えず、
じっと床を見つめた状態で顔をあげるタイミングを失ってしまう。



視界の端に映るこおり君の上履きが、スッと進行方向を向いた。

無言で職員室のほうへ歩き始める。


すらりと高い身長とスタイルの良さにぼんやり感心したのち、はっっと我を取り戻す。


わたしも行かなくちゃ……!



「こおり君、待っ───ん、うあっ⁉」



つま先に、違和感。


次に聞こえたのは、ガシャンという何かが崩れる悲壮な音と、「うぐっ」という、なんとも可愛くない潰れた自分の声だった。

< 199 / 341 >

この作品をシェア

pagetop