ぜんぜん足りない。
すると再び、わたしは彼女たちのくすくす笑いに晒される。
「ヒカリくんて、周りにほんっと興味ないよねぇ」
「いや、シンプルに国立さんみたいな子供っぽいのがタイプじゃないってことでしょ、ね、ヒカリくん」
それに対して、こおり君が「そうだね」と短く答えた。
ぐさり、傷つけられた反動で、つま先にブレーキがかかる。
……いいな、みんなは。
わたしも“ヒカリ”くんって、呼んでみたいな。
だんだん遠くなる背中を見つめながら、きゅっと唇を噛む。
──こおり君。
郡 光里くん。
背が高くて、びっくりするくらい顔がよくて。
ちょっと冷めてて無気力な感じもするけど、そんなところも魅力的……な
──たぶん、わたしの彼氏。
学校では他人のフリ。
下の名前すら呼ばせてくれない。
家の中だけ、ベタベタするの許可されてるけど、いつもわたしの一方通行。
近くにいれるだけでいいって思ってたけど、もう……そろそろ限界、かも。