ぜんぜん足りない。


膝にチリ…っと焼けるような痛みが走る。


気づけばうつ伏せに倒れていたわたし。
──────どうやら、雑巾がけに足を引っ掛けて転んでしまったらしい。


幸い、掛かってた雑巾たちにほとんどは洗濯バサミで留めてあったから、派手に撒き散らさずに済んだわけだけど……。



「……」
「……」


あああっもう! いたたまれない!

どうせ呆れた顔で面倒くさそうに見てるんでしょ。



「こおり君、先に行ってていいよ。わたし、これ片してから追いかけるので……」

「鈍くさすぎ。バカじゃないの」

「うっ」



そんな憎まれ口をたたかれた直後、目の前に、こおり君の影がかかった。



「へーき?」

「っ、わ」


わたしの手首を掴んでぐんっと引っ張り上げる。

ぱちくり、瞬き1回。

至近距離に、こおり君の顔───。


その中に、目を見開いたわたしが映ってる。

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