ぜんぜん足りない。
わがまま言えない。
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保健室は諦めて、近くの水道で血を流した。
こおり君はそれを、少し離れた場所で待ってくれていた。
ピンポンパンポーン…と呼び出しのチャイムが鳴ったのは、水で流した部分をハンカチで押さえいたとき。
『2年2組の郡光里、国立桃音! 至急職員室に来るように!』
締めのピンポンパンポーン…が鳴り終わらないうちに、ブツっと乱暴に放送の電源を切る音がした。
やばいかも! ご立腹だ……!
「待たせてごめんね、ダッシュで行ったほうがいいよね」
「走れんの?」
「うう、走るよ」
「やめときな。また転びそうで怖い」
棒読みで軽口を叩かれる。
学校でこおり君と普通に話してるって不思議な気分。
ここだけ切り抜いたら、友だちみたい。
これは、彼女じゃなくなったから……なのかな。
別れたほうが普通に会話できるって、皮肉な話だね。