ぜんぜん足りない。
「友だちは関係ないです。課題のプリント、提出する前日にビリビリに破られて。……飼い犬に」
「……飼い犬?」
今わたし、訝しげに見つめる先生と、同じ表情をしていると思う。
こおり君、ワンコなんて飼ってないのに。
ヘンに思ったのはそれだけじゃない。
言い訳をするとして、こおりならもっとまともな嘘をつくはずだから。
飼い犬に破られた……なんて、事実ならともかく、言い訳としてはショボいんじゃないかと。
だけど、それは本人も自覚してるらしく、冗談めいた笑みを浮かべて話を続けた。
「すごい凶暴で困ってるんですよね。部屋をすぐ荒らして、床もテーブルも滅茶苦茶」
「はあ。もうわかった、わかった。新しい紙やるから明日までに出せ」