ぜんぜん足りない。
那月ちゃんを見るたびに女としての自信を喪失する。
今日のゆるふわ外はねヘアーなんて、わたしがやったら、顔がよりいっそう大きく見えて終わりだよ。
あーあ、やだなあ。
女としてなにもかも負けてるんだもん。
「ヒカリっていつもあたしの席使ってるよね。ほんと迷惑〜」
そう言う那月ちゃんの顔は、もちろんぜんぜん迷惑そうじゃない。
那月ちゃんがこおり君にもう1歩近づいたとたん、もやもやが発生する。
あああっ、近いよ、近い、近い!
肩触れてる。さりげなくボディタッチしないで。こおり君のシャツ引っ張らないで。
にこって……笑わないで。
ただでさえ可愛いのがもっと可愛くなっちゃうじゃん。
こおり君が惚れちゃったらどうするの……。
こおり君は那月ちゃんの話にテキトウに相づち打ってるだけに見えるけど、ほんとは満更でもないんじゃ……。
見るのがツラくなってきて目を逸らした。
──いや、大丈夫。
学校で相手にしてもらえないだけで、郡光里くんの彼女は、わたし……だもん。