ぜんぜん足りない。


滝汗、滝汗、滝汗。

壁に隠れるのは反則ではないでしょうか?

いや、本人は隠れていたつもりはなくて、通路の邪魔にならないようによけてただけなんだろうけど。



「な……なんでいるの?」

「たった今まで一緒に怒られてたの、忘れた?」


「そうじゃなくて……なんで、待っててくれたのかなって……」

「一緒に出てくるもんだと思ってたおまえが全然出てこないから」



そっ、それは。心配してくれてたの?

どうしてそんなこと言うの、優しくされるとほんの少しの可能性を見ちゃうんだよ。

わざとやってるの?



「追加で怒られてんのかなーと思ってたら、出てきた」


相変わらず棒読みで目に生力ないくせにドキドキさせてきてずるい。

わたしたち、昨日別れたじゃん。

わたしのことフッたじゃん。


なのに、付き合ってた頃より扱いが優しいってどういうことなの。


< 210 / 341 >

この作品をシェア

pagetop