ぜんぜん足りない。
でも、知ってるよ。
わたしに夢見せてくれたあと、こおり君はぜったいに突き落とすもんね。
「光里、遅いよ〜」
──教室からひょっこり、那月ちゃんが顔を出すこと。
姿が見える前から、なんとなくわかってた気がした。
わたしには予知能力でもあるんじゃないかって思う。しかも嫌な予感だけ当たるの。
「光里が遅いからネイル塗ってたんだ〜。どうかな?」
「いーんじゃない」
「ほんとっ? 前のとどっちがいい?」
「今回の」
そっけなくはあるけど、ちゃんと那月ちゃんの手をじっと見て、答えてる。
いちいち落胆するのも疲れてしまった。
ふたりの邪魔にならないように、足音を消して自分の席へ移動する。
さっさと荷物をまとめて出ていこう。
これ以上見たくないよ。