ぜんぜん足りない。
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「ただいま……」
「あー、おかえり。てか、いつもより遅くね?」
「先生に怒られた、の」
「へー。何やらかしたんだよ」
「課題出さなかったから。……それより、律希はもう、体調いいの? 熱は……」
「7度3分。微熱。だいぶマシ」
「そっか。よかったね……」
「……お前は、よくなさそーだな?」
リビングのソファに腰掛けた律希が、テレビを消してわたしを見上げた。
「俺が帰ってきてからさあ、泣きすぎじゃねえ?」
ずずっと鼻をすする。
「うう〜っ、家に着くまでは耐えてたの……でも、…律希の顔見たら安心して涙腺壊れたぁ…っ」
あんなにあっさり、那月ちゃんに乗り換えたんだ。
っていうか、那月ちゃんと付き合いたかったから邪魔なわたしを切ったのかも。
もう、それ以外ありえない。