ぜんぜん足りない。
律希が背中をポンポンしてなだめてくれる。
「お前、昨日フラれたよな?」
「うん……」
「で、あいつはもう他の女と付き合った、と」
「うん……」
「遊ばれてたんだよ。もうわかるよな」
「……、……わかりたくないけど、っ、わかる……」
こおり君が本気じゃないことなんか最初から知ってたよ。
もはや付き合えたことがラッキーで、一瞬でも彼女にしてくれたことをありがたく思うべきなのかも。
一方的な恋愛に早く見切りをつければ楽だったのに、気まぐれで甘やかされるたびにズルズルと気持ちをひきずって。
苦しい原因はわたし自身なんだと思う。
「わたしが本気になりすぎたせいだ、」
「そんなに好きだった?」
「おかしいよね、付き合っても周りにバラすなって言われて、学校では無視されて、ひどい扱いしかされてこなかったのに、おかしいよね…っ?」