ぜんぜん足りない。
律希がうん、と低い声を零した。
「おかしーよ。でも、わかる」
「……わかるの?」
「恋愛って。理由じゃなくて、感情の問題なんだよな。報われないからって嫌いにはなれない、もう遅いんだよ」
指先が伸びてきて、わたしの髪の毛をすくった。
「だって俺もそうだし」
「………」
「寮生活で離れてたら忘れられると思ったのに無理で、可愛い子から告白されたのに断ったこともある。そんで、いざ久々にお前に会ったら、他に好きな男がいるとか言うし。なかなかひどい仕打ちだろ?」
なあ?と少し笑って、煽るように見てくる。
「う、ええと、……今のセリフになんて返すのが正解なのか、わかんなくて、ですね……」
男モードを発動させるとどうも弱くなる。