ぜんぜん足りない。

寝起きのときほどじゃないけど、喉の違和感はまだ消えない。


「桃ちん〜おはよっ」

学校に着いてミヤちゃんが声をかけてくれた。

のに。


「……、ん? ん゛ん゛ッ」


出したはずのおはようの声が出てこなくて、喉を唸らせてみる。



「桃ちんどったの⁉ 喉に怪獣でも飼い始めた⁉」

「あ〜あ〜、あー…。っ、よし、治ったみたい!」


何回か発声練習をしたら、いつもの声が戻ってきた。


「え、大丈夫?」

「なんか喉の奥が痛くてー。でもそれ以外はぜんぜん平気だから大丈夫だよ!」

「そう? たぶん風邪だよね? 悪化しないといいね……」


悪化しないようにたくさん水分取って、喉を潤しておこうかな。



「それより、昨日はありがとね、ミヤちゃん。聞いてくれたおかげですっきりした」


少しボリュームを落としてお礼をいうと、ミヤちゃんも周りを気にしたように、顔を近づけてくる。


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