ぜんぜん足りない。
そんなときだった。
「那月、やっぱり最近調子乗ってるよねえ」
教室の後ろのほうから、女子のヒソヒソ声が聞こえてきた。
聞くからにイヤな響き。
そっと振り向いてみて、びっくり。
固まって話してるのは、いつも那月ちゃんを囲んでる仲良しメンバーたちだったから。
教室を一周見渡してみても、那月ちゃんの姿はなくて、まだ登校してないか、トイレか、……こおり君といたりして。
だって、こおり君もいないんだもん。
わたしより先にマンションを出たはずの、こおり君がいない。
もやあっと暗い感情が浮かんでくる。
もし本当に密会でもしてるなら嫉妬してしまうけど、あの女子軍団の悪口大会は聞き捨てならない。
「うちらと遊ぶのより、男子との約束優先するじゃん⁉ どんだけ好きなんだよってね」
「マジそれ! あたしたちと喋ってても、すぐ男子巻き込もうとするじゃん……空気読めねーの?みたいな」