ぜんぜん足りない。
1日が長かった。
授業を受けて、雑用をこなして、こおり君をなるべく見ないように神経をつかって、那月ちゃんが女子軍団に遠巻きにされているのを横目に見ながら……。
幸いと言っていいのかわからないけど、こおり君のいるグルーブの男子たちが那月ちゃんに声を掛けていて、ひとりぼっちということはなさそうだった。
ただ、遠巻きにされる原因となったその男子たちといるせいで、事態が悪化しないか不安でしょうがない。
さらに、わたしの喉……。
「桃ちん、のど飴あげるね〜。平気?」
「あ゛……ありがどう゛っ、ミヤちゃん」
濁音が混じって、なんとも可愛くない。
ずっと発声していればなめらかに出てくるようになるんだけど、しばらく黙っているとすぐにダミ声に戻ってしまう。