ぜんぜん足りない。
家に帰っても、もう誰もいないんだよね……。
そう考えると、ちょっぴり憂鬱で。
さらに5限目の途中に降ってきた雨が、わたしの気分をさらに暗くさせた。
そして、終礼前。
トイレに行くと、あの悪口女子軍団がいた。でも、わたしに目もくれずに話に夢中な様子で、耳に届くのは、やっぱり那月ちゃんの悪口。
急いでトイレを済ませて、逃げるように教室に戻った。
那月ちゃん、大丈夫かな……。
心配しながらも、教室でこおり君とふたりで話してる姿が目に入ると、どうしても嫉妬に切り替わってしまう。
……わたし醜い。もういやだなあ。
「きりーつ、礼」
気だるい号令に合わせて頭を下げて、帰り支度を始める。
「郡は、ちょっと今から職員室な」
先生のそんな声に、顔をあげたくなるのを我慢した。
こおり君、また呼び出し?
なんでだろう……。
いやいや、関係ない。考えない考えない。
頭から振り切って、くつ箱に向かった。
トン、と地面にローファーを落として、足を突っ込む。
そして、顔を上げた先──────
「……あ、」
昇降口の屋根の下で、ひとりで佇んでる那月ちゃんを見つけた。