ぜんぜん足りない。
どこかでこおり君の声が聞こえる。
近いような遠いような不思議な感覚。
そして、わたし、浮いてる。
足が地面についてなくて、ゆらゆらして……乗り心地、いい感じ。
カチャって、ドアのロックが外される音がした。
それからまたゆらゆらして……
今度は背中に、ふわって柔らかい感触がした。
もう浮いてないみたいだけど、これはこれで心地いいなあ。
「おまえ、いつから具合わるかったの」
……あ、またこおり君の声。
「バカは風邪ひかないんじゃないの」
おでこに自分じゃない体温を感じた。
ちょっと低め。
ひんやり。
気持ちよくて思わず擦り寄せた。