ぜんぜん足りない。
『ねえ桃音、おにーちゃんができたら寂しくなくなるかな?』
小学3年生にあがるちょっと前のこと。
珍しく夕方に帰ってきたお母さんが、にこにこしながらそう言った。
『ママね、この話はずっと断ってきてたんだけどね? 桃音のためなら、これもひとつの手かな〜と考え始めたんだ』
お母さんがあんまり嬉しそうに話すから、意味がよくわからなかったけど、うなずいておいた。
そしたら数日後
『桃音ちゃん、こんばんは。……ほら、律希もあいさつしなさい』
お母さんの恋人……じゃなくて、『親友』だという男の人と、男の子がウチにやって来た。
しかも、今日から一緒に住むって言うんだから、びっくり仰天。