ぜんぜん足りない。
家族としても、友だちとしても、ひとりの男の子としても、律希さえいればそれでいいって、本気で思ってた。
離れるなんて考えられなくて……。
──────でも。
日に日に想いを募らせてたわたしと反対に、律希は中学にあがった頃からしだいに冷たくなっていった。
話しかければ答えはしてくれるものの、返事はそっけなくて、目もろくに合わせない。
同じテレビ番組が見たくて隣に座ったら、無言で立ち上がって自分の部屋に戻っていく。
学校では無視。
鈍いわたしでも、ここまであからさまに距離を取られれば、嫌われたんだと思うしかない。
それでも一緒にいたかった。
お母さんたちが言ってた、『少なくとも高校卒業までは』って言葉に縋って、18歳までは同じ屋根の下で暮らせると思ってた……のに。